岡本松浜「白菊」
角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、9番目の句集、岡本松浜(おかもと・しょうひん)「白菊」を読みおえる。
彼は1時、「ホトトギス」の会計・編集の一切を任されるが、会計上の不都合を重ね、大阪の生家に戻った。1時は俳誌を発行したが5年で廃刊、以後は金銭上の不義理を重ね、昭和14年、6畳の貸し間で窮死した。
「白菊」は、晩年まで彼を見棄てなかったわずかな弟子のうちの一人、下村槐太が師の3回忌の追善のため、自ら原紙を切り製本した、少部数の謄写版句集である。
その後は忘れられていたらしいが、こうして全集に収められれば、その句は長く残るだろう。文学に関わる者は、作品が優れていれば後世に残る、という事か。
以下に5句を引く。
春の夜や草履に軽き町歩き
豆雛の目鼻ゑがきて世を送る
雲の峰百姓うごくばかりなり
大障子うす日さしつゝ野分かな
肩掛けや妻なる身にて勤め人
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