岡井隆「<テロリズム>以後の感想/草の雨」
思潮社「岡井隆全歌集」Ⅳ巻(最終巻、2006年・刊)より、「<テロリズム>以後の感想/草の雨」を読みおえる。
テロリズムの感想の歌は、歌集での比重は大きくなく、「<テロリズム>の感想」の章でも、どちらに肩入れするというのでも無い。「樋口一葉、ウサマ・ビン・ラディンに会ひにゆく」の章は、奇想である。
「~で朗読した」と付記される幾連があるが、朗読による影響は、僕にはわからない。
以下に8首を引く。
伊勢生まれ知多育ちなるにほ鳥の母は対岸をうたがはざりき
ひとりひとりがさびしい熊に見えてくるあの頃は愉しい敵だつたのに
無精なる鵞鳥の歩みをみて下さい「困つたものだ」きみは言ふらむ
忘れ易き単語を手帳にメモしをりルサンチマンからスノビズムまで
文庫本になつたととても喜んでた 蜜柑の花の似合ふ人だつた
いつか来るさう思つてたがだがこんな形だとは知らなかつた深さだ
すぐそこに茜(あかね)ありしを間違つて遠い夕霧を買つてしまつた
右に折れ左にまがり帽を脱ぎまたかうぶりてわれはゆくらむ
コメント