永井陽子「樟の木のうた」
青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、3冊めの「樟の木のうた」を読みおえる。
原著は、1983年、短歌新聞社・刊。
280首、春日井建・解説。
彼女の歌は、幻想性、抒情性、音楽性等が高く評価されているようだ(僕が、さしでがましいけれど言うなら、古典と現代性の統合を成している)けれども、僕は作歌では生活短歌(それも人事詠)しか詠めないので、この歌集より、リアルめの8首を以下に引く。これらが歌集の歌風だと思わないで頂きたい。
夕野分だつ法起寺の塔までを草の名花の名あひおぎなへり
大津絵の鬼に背中をたたかれぬ叩かれた背がいつまでもさびし
雨あがるくきやかな尾根山萩のつのぐむころを逢ひにゆきたし
星を結びて天に柄杓を描くこと両親が教へくれし夏の夜
あした行く街があるゆゑかなしみはしづめねむれと葉月のすすき
ブランコを漕ぎいだすとき視野に入る古代の空とオニクルミの木
更科やあふるるほどの冬陽浴みさびしきもののひとつ朴の木
やさしく低く朝けの風に呼ぶこゑとなりて歌はむ樟の木のうた
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