三國玲子「噴水時計」
三國玲子(1924~1987)の全歌集(2005年、短歌新聞社・刊)より、第3歌集「噴水時計」を読みおえる。
先の6月18日の記事、第2歌集「花前線」読了に続くものである。
原著は1970年、短歌新聞社・刊。
これらの短歌が詠まれた1966年~1970年の間に、彼女は歌人として、「ベトナムに平和! 歌人の集い」事務局員、合同歌集「平和への希求」(短歌新聞社・刊)編集委員として活動したが、それらを作品化したのかどうか、歌集には収められていない。
母と、歌友二人が亡くなり、それらは作品化された。また洋裁を止め、市街地の高層アパートへ転居し、都心の出版社に勤めた。
「あとがき」で彼女は、「皮相な新しさよりも内部の深化をと心がけてきましたし、…」と述べている。
以下に6首を引く。
空濁る方に帰らむ紅梅の咲き照る下も寒くなりたり
ものぐらき土間に刃物を打つ火花さやかなりしかわが父祖の家
俊敏なるけものの如く過ぎゆきし児らの裸身はまぶしかりにき
年古りし門扉も凍てて籠る日にたはけし神話読めばたのしき
遺されし者かぎりなくあはれなれど急ぎ帰らなむ常のくらしに
移り来し高層のわが窓のへに朝はしきりに鳩の影動く
本文と無関係。
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