三國玲子「翡翠のひかり」
短歌新聞社「三國玲子全歌集」(平成17年・再版)より、遺歌集となった第7歌集「翡翠のひかり」を読みおえる。
原著は、昭和63年、短歌新聞社・刊。283首。
彼女は入院中の病状好転期に、6階より飛び降りて自死した。享年63.
次に引くしまいの作品にあるように、歌誌「求青」の編集責任者の任が重くすぎたのか。しかし彼女は先師の「潮汐」の有力歌人であったろうし、出版社で編集の経験もあったのだが。
以下に6首を引く。
津軽野のみのりのうちにあざあざと疎開少女の悲しみ蘇る
一面の鏡となりてそそり立つビルディングあり兇事のごとく
苦しみてわが編みし書は書架にあり著者の大方はみまかりましぬ
ああ君は傍若無人うらうらとせし声ながらわが胸を刺す
誰も来ぬ誰にも会はぬ安けさも病みて二十日の髪うとましや
編集の無間地獄を念ふとも愚かに病みて刻を逝かしむ
この全歌集には、そのあとに「略年譜」、「初句索引」、「巻末記」を収める。
コメント