古井由吉の小説「行隠れ」を読みおえる。
集英社文庫、昭和54年・2刷。
僕は彼の作品を、関心を持って読み続けている。
この小説のストーリーは、妹の結婚式の前日に失踪した、片足の具合の悪い姉が、自殺して見つかる、というものである。
主人公(姉妹より若い二十歳の青年)の心情を主として、家族、恋人との心の関係を、濃密に描いている。
現代の真実(事実ではない)を描こうとすると、このように読むのに難渋する文体になるのか、と思う。
バブル期の軽薄短小・以前の、重厚深暗(短編もあるから、長大とは言わない)な作風である。
戦後文学を引き継いだ作家だと、僕は考える。
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