春日井建「未青年」
砂子屋書房、2010年・刊。
箱、帯、本体にパラフィン紙カバー、栞あり。
全9歌集と、年譜・解説・解題・初句索引を収める。
彼の本を僕は、国文社・現代歌人文庫で正・続の2冊、思潮社の追悼版「春日井建の世界」を、読んだきりである。
彼には多くの批評、評伝があるだろうが、僕は読んでいない。畏れ多い、おこがましい、などの言葉が胸内に飛び交うが、拙い感想を書き綴っていく積もりだ。
彼の第1歌集「未青年」を読みおえる。
原著は、1960年、作品社・刊。彼の17歳~20歳までの短歌、350首を収める。三島由紀夫が序文を寄せた。
性的傾向から、世への反逆者を志向するようだが、両親とも歌人であるなど良家に育った彼には、踏み込めないようだ。
自分の思いに素直だという意味で、健康的である。
以下に6首を引く。
テニヤンの孤島の兵の死をにくむ怒濤をかぶる岩肌に寝て
火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ
失ひし心かなしみ歩む背に綿雪の死衣が被さりてくる
額髪が風にみだれて荒くれの弟子は無瑕の夜を憎むなり
軟禁の友を訪ひゆく夜くらく神をもたねば受難にも遭はず
わが肩に垂れて青年の掌のごとき緑の房よ葡萄樹のした
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