春日井建「白雨」
砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、第7歌集「白雨」を読みおえる。
原著は、1999年、短歌研究社・刊。359首。
今月3日のこのブログで紹介した、「友の書」に次ぐ歌集である。
歌集名の「白雨」は、自然現象の白雨(夕立、にわか雨、の意)の他に、「思いがけなくやってくる運命」を意識したもの。作品は、癌告知以前だが、編集は告知以後なので、その感慨もあるだろう。
「短歌研究」誌上に発表された、30首連載8回の内の「白雨」30首と、角川「短歌」に発表された「高原抄」21首により、第34回短歌研究賞受賞(この歌集に収録)、また先の「友の書」と、この「白雨」を合わせて、第27回日本歌人クラブ賞、第34回迢空賞を受賞して、栄誉の多い歌集である。
以下に7首を引く。
理(ことわり)の外とも見えて訃の報がとどきぬ妹は寡婦となりたり
これは樫あれは榛(はしばみ)おもむろに夕暮れはきてひと色となる
発語とは思はざれども樅の木が風に揺らぎてさはさは音す
山小屋の部屋の灯明りそのしじま見咎めたるか青葉木菟啼く
いづこにて死すとも客死カプチーノとシャンパンの日々過ぎて帰らな
ひんやりと秋は到れりこの朝の幸福の木に水をやるべし
操りし白帆の日々は杳かなれ吹きすぎてゆく風の脚見ゆ
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