春日井建「友の書」
砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、第6歌集「友の書」を読みおえる。
原著は、1999年、雁書館・刊。
1987年~1996年(49歳~58歳)の作品、387首を収める。
彼の壮年時代にあたり、また国内、外国で幾人かの友人に恵まれ、歌集の題名ともなった。
また老いた母を詠んで優しい。
以下に7首を引く。
近づける死を手なづけし算段も商人(あきうど)なれば巧みなりしよ
されど肉は悲し汀にうち伏して火照る躰をしづめかねゐつ
さなきだに虚無の光ると見てゐたりダイヤのピアスある彼の耳
いかなる神も持たぬ誇りとさびしさや青のモスクに額を伏すとも
これ以上衰へてならじと起き出でて母が散歩に行く坂の径
知りゐしは人の一部に過ぎざりし当然を強き雨叩きゐる
路上こそわが家と言ひし若き日の流竄を今にもてあましつつ
10月に入ったが、当地は今日も、夏日だった。
コメント