エッセイ集「お父っつあんの冒険」
日本エッセイスト・クラブ編の「’95年版ベスト・エッセイ集 お父っつあんの冒険」を読みおえる。
文春文庫、1998年・刊。64編。
この9月28日に紹介した、「’94年版 母の写真」に次ぐ本である。
バブル崩壊後の不況が続くせいか、グチっぽい話、当たり障りのない話が多く、景気のよい話、ハッピィな話は少ない。
中で、老作家・八木義徳(1999年に88歳で亡くなった)の、「老いの風景」に仄明るみがある。
喫茶店の総ガラス張りの窓際から、人間風景を見物する事を楽しみにしている。
よたよた歩きの老男性に”傲慢な”喜びを感じ、よちよち歩きの幼児に「生命の光の照射」を感じる。女性の一群の白い太腿に、目をまぶしくさせる”光源”を感じる。
穏やかな老境を思わせる一文である。
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