石原吉郎「禮節」
花神社「石原吉郎全詩集」(1976年・刊)より、5番めの「禮節」を読みおえる。
原著は、1974年、サンリオ出版・刊。
先の11月19日に紹介した、「水準原点」に続く詩集である。
冒頭の作品「断念」には、シベリア抑留時代の考えと、日本での生活の考えを、切り離そうとするようだ。初めと終わりを引くと、次のようである。
この日 馬は
蹄鉄を終る
あるいは蹄鉄が馬を。
(中略)
馬は脚をあげる
蹄鉄は砂上にのこる
「犯罪」では、言葉の意味やイメージから、語感の詩へ移る、と宣しているようだ。初めの3行のみ引く。
音楽であるために
かくもながい懲罰を
必要とした
(後略)
「闇と比喩」では、彼の詩の出発が、戦後詩の主流であった、比喩に比喩を重ねるような手法を、採らなかった理由を示すようだ。末尾の4行を引く。
(前略)
比喩とはならぬ
過剰なものを
闇のかたちへ
追い立てながら
このあと彼は、後期の「北條」「足利」の詩集へ、移って行く。
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