金子光晴「西ひがし」
中公文庫、1977年・刊。
彼の東南アジア、ヨーロッパを放浪した紀行文、「マレー蘭印紀行」(2011・4・14・記事)、「どくろ杯」(2011・1・28・記事)、「ねむれ巴里」(2011・11・22・記事)に継ぐ、最後の本(いずれも中公文庫で読んだ)である。
この本では、ヨーロッパを脱して、寄り道をし、日本に帰国後までが、語られている。
「マレー蘭印紀行」だけが昭和15年・刊の本で、あとの3冊は、詩人の晩年の回想に拠る。
僕も初めは「凄い記憶力だ」と感心して読んでいたが、読者の人気に応えて、面白おかしく、フィクション(彩りづけ)を交えての、紀行文らしいと思うようになった。
彼が戦時下に日本人でただ一人、反戦詩を書いた根底を、これら紀行文に見出だそうとしても、無理であろう。
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