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2013年1月11日 (金)

鈴木英夫「忍冬文」

Cimg6699_2 鈴木英夫氏の歌集「忍冬文」を読みおえる。

 氏は1912年・生、2010年・没。

 昭和52年、柏葉書院・刊。304首。コスモス叢書第102篇。

 箱、本体にビニールカバー。(写真は箱の表)。

 第5回日本歌人クラブ賞・受賞。

 題名の「忍冬文」(にんどうもん)は、「忍冬のような蔓草を図案化した一種の唐草模様」であり、「忍冬」とは「スイカズラ」の漢名であり、「スイカズラ」とは常緑蔓性木本、また「すいかずら科」は双子葉植物の一科である(いずれも電子辞書版・広辞苑第6版に拠る)。

 昭和45年のギリシア・トルコ・イラン・アフガニスタン・パキスタン・インドを巡る旅、昭和48年のエジプト・シリア・イラク・クェートを巡る旅、二つから得られた短歌を集めている。

 観光ではなく、古代文明史への深い関心をもっての旅である。

 以下に7首を引く。

糸柳かすかにあをむエジプトの春に来遭へり麦の穂はまだ

たたかひを秘めてしづまる国狭く雪かづく山砂漠にせまる

アッシリア栄えたる日の空を知らず石獣の翼白日に照る

チグリスとユーフラテスとここに会ふ春すさまじく風が煽る波

ヒッタイトここに栄えし石の城ひとすぢ細く水いまも湧く

岩山にならびうがてる王墓群砂吹きつけて粗しおもては

山の水引きてわづかに草生ふる牧を恃みて牛いくつ飼ふ

 これで「コスモス」先達歌人の歌集を読んでの、拙い記事のシリーズは仕舞いである。

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