鈴木英夫「忍冬文」
氏は1912年・生、2010年・没。
昭和52年、柏葉書院・刊。304首。コスモス叢書第102篇。
箱、本体にビニールカバー。(写真は箱の表)。
第5回日本歌人クラブ賞・受賞。
題名の「忍冬文」(にんどうもん)は、「忍冬のような蔓草を図案化した一種の唐草模様」であり、「忍冬」とは「スイカズラ」の漢名であり、「スイカズラ」とは常緑蔓性木本、また「すいかずら科」は双子葉植物の一科である(いずれも電子辞書版・広辞苑第6版に拠る)。
昭和45年のギリシア・トルコ・イラン・アフガニスタン・パキスタン・インドを巡る旅、昭和48年のエジプト・シリア・イラク・クェートを巡る旅、二つから得られた短歌を集めている。
観光ではなく、古代文明史への深い関心をもっての旅である。
以下に7首を引く。
糸柳かすかにあをむエジプトの春に来遭へり麦の穂はまだ
たたかひを秘めてしづまる国狭く雪かづく山砂漠にせまる
アッシリア栄えたる日の空を知らず石獣の翼白日に照る
チグリスとユーフラテスとここに会ふ春すさまじく風が煽る波
ヒッタイトここに栄えし石の城ひとすぢ細く水いまも湧く
岩山にならびうがてる王墓群砂吹きつけて粗しおもては
山の水引きてわづかに草生ふる牧を恃みて牛いくつ飼ふ
これで「コスモス」先達歌人の歌集を読んでの、拙い記事のシリーズは仕舞いである。
コメント