高野素十「初烏」
角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、8番めの句集、高野素十「初烏」を読みおえる。
前回は3月16日付けの記事、橋本多佳子「信濃」だった。
原著は、昭和22年、菁柿堂・刊。
虚子・序文、自序、654句(新年・四季別)を収める。
高野素十(たかの・すじゅう、1893~1976)が、東大医学部を出て、法医学教授となりながら、客観写生の句を作ると、物足りない面がある。
人間探求派、社会性俳句のように、自分の生き方の信念に賭けた所がないと、文学表現に精進しても、それだけで終わってしまうのではないか。
この句集には、農民等の登場する句も多い。以下に5句を引く。
輪飾りのかたまり合うて燃えにけり
歩み来し人麦踏をはじめけり
ひまはりの双葉ぞくぞく日に向ひ
いちめんに菱採舟や潟暑し
ひつぱりて動かぬ橇や引つぱりぬ
季節に合わせて。
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