鈴江幸太郎「海風」
「鈴江幸太郎全歌集」(1981年、初音書房・刊)より、第1歌集「海風」を読みおえる。
前の初期歌集「くろもじ」を紹介した、先の2月17日の記事より、間が空いた。
原著は、昭和18年、八雲書林・刊。
505首、アララギ叢書第104篇。
彼の事は、僕の蔵書の三省堂「現代短歌大事典」に、多くは載っていない。1900年~1981年。中村憲吉、土屋文明に師事。1953年、歌誌「林泉」を創刊・主宰。他。
「海風」では、母を亡くした娘を慈しむ歌に、戦前では珍しいと思える家庭的な面を感じた。
以下に6首を引く。
晩春(おそはる)の雨あとさむき峡(かひ)の家ひとつ炬燵によらしめたまふ
うづたかく雪積むかげに燈(ひ)ともせる除雪人夫ら夜もすがらなる
部屋ごとに晝臥(こや)りゐる人みれば寂しき谷の湯宿に来つる
柩あけてなげかざらめや埋花(うめはな)のかくめる妻の顔は浄(きよ)らに
この夜半(よは)も眠りながらにすすり泣く幼兒は何を夢見るならむ
じりじりと時の来向(きむか)ふうつつにもけふ来てあそぶ磯の上の園(その)
本文とは、無関係。
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