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2013年3月 5日 (火)

鈴江幸太郎「海風」

 「鈴江幸太郎全歌集」(1981年、初音書房・刊)より、第1歌集「海風」を読みおえる。

 前の初期歌集「くろもじ」を紹介した、先の2月17日の記事より、間が空いた。

 原著は、昭和18年、八雲書林・刊。

 505首、アララギ叢書第104篇。

 彼の事は、僕の蔵書の三省堂「現代短歌大事典」に、多くは載っていない。1900年~1981年。中村憲吉、土屋文明に師事。1953年、歌誌「林泉」を創刊・主宰。他。

 「海風」では、母を亡くした娘を慈しむ歌に、戦前では珍しいと思える家庭的な面を感じた。

 以下に6首を引く。

晩春(おそはる)の雨あとさむき峡(かひ)の家ひとつ炬燵によらしめたまふ

うづたかく雪積むかげに燈(ひ)ともせる除雪人夫ら夜もすがらなる

部屋ごとに晝臥(こや)りゐる人みれば寂しき谷の湯宿に来つる

柩あけてなげかざらめや埋花(うめはな)のかくめる妻の顔は浄(きよ)らに

この夜半(よは)も眠りながらにすすり泣く幼兒は何を夢見るならむ

じりじりと時の来向(きむか)ふうつつにもけふ来てあそぶ磯の上の園(その)

Photo
写真素材集サイト「足成」より、水仙の1枚。

本文とは、無関係。

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