鷺沢萠「帰れぬ人びと」
文春文庫、1998年7刷。
「川べりの道」「かもめ家ものがたり」「朽ちる町」「帰れぬ人びと」の4編を収める。
読み始めて、1度、読んだらしい記憶があった。たしかに初め2編は、読んでいたので、途中で止めた本らしい。
「川べりの道」は、1度めの妻を早くに失い、2度めの妻を捨てて、新しい女性と住む父に、残されて姉弟二人で生きる弟が、父の元へ毎月、生活費を貰いに往反する様を描く。
「かもめ家ものがたり」は、学生運動から脱落して、教師と翻訳家になっている二人の再会、プロ野球2軍を解雇された青年、などの物語である。
「朽ちる町」は、父親の会社の破産と両親の離婚に遭って成人した青年が、塾講師の副業をしながら、その関わる人々の物語である。
「帰れぬ人びと」の主人公も、父親の会社が倒産している。父を裏切った相手の娘かと訝りながら交際して、その事実も確かめられてしまう。
描かれた事を別とすれば、救いのない世界である。
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