遠藤たか子「水のうへ」
砂子屋書房、2010年11月25日・刊。
帯、432首。「かりん」「まひる野」「あんだんて」会員。
著者は、福島県南相馬市原町区に在住で、福島第1原発に近く、原発への不安を多く詠んでいる。
歌集発行の3ヶ月余りのちには、東日本大震災と原発災害に遭っている。原町区は、1部が警戒区域(現在も住民避難中)、多くが緊急避難区域に指定(現在は解除)された。
原発への危機感と、息子さんたちの独立等の歌から、以下に8首を引く。
原発事故想定訓練二日目の冬陽うごかず刈田に染みて
地下室(シエルター)をもつ家ひそかにふえるまで古りし原発の故障はつづく
逃しやる小鳥のやうに子どもらを一人またひとり発たせて眠る
ひしひしと喪失の予感熄みがたき夜の白鳥座夏越えて冷ゆ
グラウンドゼロとなるかもしれぬわが町のどんぐり林のどんぐりかこれ
換気音はげしき建屋(たてや)に原子炉の安全説かるガラスを隔て
しばし目を瞑り数ふる原発に働くめぐりの幾人の顔
みぎ火発ひだり原発 早春の風の岬は波荒く寄す
コメント