吉田律子「残華」
東京都・在住の歌人・吉田律子さんの第2歌集、「残華」を読みおえる。
2010年、ながらみ書房・刊。
帯、1ページ2首。近田順子・跋、あとがき、を付す。
第1歌集「孤高の貌」の完成を待たずに夫(大恋愛の末に結ばれた、とのこと)が癌再発により逝き、10年所属した「かりうど」の師・青井史が逝き、自身は鬱病となった。
しかし短歌との縁は切れることなく、「未来」所属の近田順子の指導を受け、信仰の力もあり、第2歌集上梓に至った。
亡夫恋の作とともに、海外旅行詠も混じる。お孫さんを詠んだ作もほほえましい。
以下に7首を引く。
此の世との別れ告ぐるか夫の眼は見守る吾にしかと真向かう
胸内に牡丹を秘めて生きし師よ唐突に崩れ逝きてしまいぬ
子には子の我には我の思いあり夫三回忌 水無月の風
水脈(みお)という美しき生すでになくただひたすらに混濁を生く
我の手に暖かき手の重ねられ誰なんだろう夢から覚めて
売却の印鑑押しつつふとよぎる三十代のローン重き日
君の亡き初春四たび迎えつつ残華秘めゆく女となりぬ
コメント