鈴江幸太郎「石蓴集」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、14番めの歌集、「石蓴集」を読みおえる。「石蓴」は国語辞典で「あおさ」と引けば出て来る。他の読み方が、あるかどうか知らない。
今月2日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「鶴」に継ぐ歌集である。
原著は、初音書房、1979年・刊。
420首を収めて、序文もあとがきも無い。
彼の歌には、字余りが多いなど、破調とも取れる作品が稀にある。ここではピックアップしなかったけれども。
以下に7首を引く。
藤波に寄する思ひも幾十年けふ淸瀧の瀨の上の花
瀨々の音河鹿のこゑの高まれば闇に相追ふ螢の光
下りゆく池の汀におのづから朽ち果てし幹仆れかさなる
松すこし見ゆるは海に入るあたりただ川波のひろく押し行く
一夜寝て友に隨ふ瀨の上の道は河鹿の乏しらに鳴く
線香の燃え盡くるまでみなぎらふ暑き光に妻は立つらし
さまざまの思ひに見たる富士の嶺けさも安らぎて仰ぐにあらず
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