前田静枝「葉桜の道」
前田静枝(まえだ・しずえ)さんの第1歌集、「葉桜の道」を読みおえる。
2010年、不識書院・刊。
彼女は、幼い頃より短歌に親しんだが、結婚、育児、海外渡航によって、作歌を中断。夫を亡くされて落ち込んでいた頃、家族の勧めで短歌教室に通い、1997年に「未来」入会。
初めは近藤芳美・選を受けたが、近藤・没後は桜井登世子の選を受けている。
大人しい人柄ながら、それをも自省する風で、作品に気品を与えている。
以下に7首を引く。
椋鳥も尾長もむれてついばめり汗し刈りたる芝庭のかげ
逃げるなと吾が手を強くにぎりしめ夫は幻覚のなににおびえき
戦場に兄を送りし日の母が画面をよぎるイラク派遣に
かきつばたふかむらさきに群れ咲ける水際をゆけばはなびらゆらぐ
雨のふる成城の町をただ歩む「近藤芳美をしのぶ会」も過ぎ
かかる日の来るとは、思わず涙してオバマの勝利宣言をきく
ふるさとの胎内川の上空を朱鷺とぶと今朝のニュースは伝う
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