野中洋子「絵本の山猫」
野中洋子さんの、「緑の歴史」に続く第2歌集、「絵本の山猫」を読みおえる。
2008年、砂子屋書房・刊。帯。412首。
山田富士郎「解説」7ページ、自身の「あとがき」を付す。
当時、彼女は「未来」の山田富士郎・選歌欄に参加していた。
優しい心で生活を詠んで、新しさや強さは少ない。引用ではそれらを多く引いた。
僕がそれらを強く求める訳ではないが、やや類型的な作品になってしまいかねない。
なお歌集名から示唆される、メルヘン調の作品は、ないようだ。
以下に7首を引く。
摘みて来し木の芽草の芽よろこびて食ひたる息子を見送りにけり
台風よ来るならこいと片寄せてスクラム組ます花の鉢百に
残飯を食ひにあつまる狸らをライトアップに見せる湯の宿
海鞘(ほや)といふ怪異なものに刃を入れて松のとれたる食卓にのす
さくら咲き紫木蓮咲き娘らとすごす二日のはやく過ぎたり
太刀に似てすらりとながき太刀魚の箔落ちやすし俎板の上
あへぎつつのぼりきたれば東屋のベンチゆづりてくだりゆく猫
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