蓮本ひろ子「自動扉」
昨日に続き「コスモス」の先達、蓮本ひろ子さんの第1歌集、「自動扉」(1979年、伊麻書房・刊、コスモス叢書第124篇、502首)を読みおえる。
彼女は人との接し方が上手ではなかったようだ(僕が上手だと言うのではなく、また批判するのでもない)。
自我の強い思いは、戦後の女性解放の思潮と、その後の沈滞化に関わりがあるかと、僕は現の状況を知らないながら推測する。
彼女は「あとがき」で、「そして、あっ、と気がついたとき、最初、一本の藁でしかなかった短歌は、いつのまにか私の心の命綱にかわっていました。」と述べている。
気になる歌が多いのだけれども、以下に7首を引く。
時ながく没り陽は照りてをさな子の乳の香そみし袷をほどく
上げ底の底剥ぐ如き同性の眼もて車中の女を眺む
関西弁聞くは心の安らぐと訛失せたる夫にしていふ
高速度撮影のごとゆつくりとパイプ引きぬき襲ひ来しとぞ
山津波に似たる時代を生きしかば筋の通りしことは信ぜず
種あかし知りたる手品みるおもひ齢(よはひ)かたぶき異性にむかふ
毎日のくらしのつけは必ずやわが身に来ると知りたり今に
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