小畑庸子「孤舟」
2006年、角川書店・刊。
水甕叢書第787篇、角川書店「21世紀歌人シリーズ」の1冊。
彼女の歌は、時どき武張った作品がある。
女性が現代で、力まなければならない場合もあるだろうが、文芸の表現で力んでほしくない。
彼女はまた、短歌に新しい表現(と僕にはおもわれる)を取り入れる事に、執心している。
新場面や俗語などなのだが、短歌の表現の領域を拡げるものとして、心をうつ。
それらから絞って、以下に7首を引く。
ビニールホースの小さき傷が垂直に噴く春の水土に吸はるる
フリーランスの戦場記者の死、その妻は笑みをり皮膚の下にて哭きて
実よりも虚のやや多きひと日暮れ明日の我にわづか間のあり
カード式キー失せいたく困られしことも聞きにき扉の前に
風吹けばわがセンサーを刺激せり子が植ゑゆきしマリーゴールド
太りたる鳩と電車の去りしのち両足跳びに冬雀来る
ざんばら髪ふり落したる森木木に荒武者一騎鞭くれてゆく
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