染野太朗「あの日の海」
染野太朗さんの第1歌集、「あの日の海」(2011年、本阿弥書店・刊、まひる野叢書第282篇)を読みおえる。
島田修三・帯文。
染野太朗(そめの・たろう)さんは、1977年・生、1995年「まひる野」入会、2004年より教職に就く。
欺瞞の多い生活に悩み、心を病んで、休職、通院したが、復職したようだ。
教職は羨ましいようだが、ストレスが多く、悩みも多いようだ。
以下に7首を引く。
元素記号を唱えるように結婚を告げたる友この明るさは何
教室のうしろに立った母たちの海で死んでも濡れない茶髪
玉葱を炒めておれば鍋底にうらみつらみの凝りはじめぬ
銃弾を箸につまめば店員が銃を差し出す「それ〈当たり〉です」
桃色の布団に妻は尾の切れた蜥蜴のようだ伏して泣きおり
アイビーがこのひと月をまた伸びて心療内科の待合室に
東京に降る雪よりもあっけなくぼくの不安は新薬に消ゆ
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