小池光「バルサの翼」
砂子屋書房の現代短歌文庫「小池光歌集」(2003年3刷)より、第1歌集「バルサの翼」を読みおえる。
先の11月12日の記事「3冊と1誌」で、購入を紹介した本である。その記事と、そこでも紹介したソネット「渋る」で、1ページ2段、1首2行書きは困ると書いたが、同時に購入した「続 同」「続々 同」では、1ページ1段、1首1行書きになっていた。僕以前にも、批判する読者がいたのだろう。
彼は1947年・生まれ、1972年に東北大学理学部大学院・修了、その頃に短歌に出会って「短歌人」に入会した。
1975年・上京、私立高校の教師となる。(この本の裏表紙の、著者紹介に拠る)。
この歌集(1978年、沖積舎・刊)で僕にわからない作品があり、逆年順編集も賛成できない。
彼には、東北より上京した歌人の寺山修司(のちに短歌より離れたけれど)の影響がある。
また斎藤茂吉、岡井隆、永田和宏らに繋がる、理系出身歌人の輝きがある。
以下に6首を引く。
雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ
あぢさゐの素枯れあふるる暗がりへみどりごの父帰り来たれり
野にひびくかるき音して折られたる感触もすでにみづからのもの (骨折)
ぎりぎりと執着し来ておのれなる山椒魚(さんせう)の吐く息のみじかさ
表情のひとつひとつを喚びかへし合歓の花高き夏は来たりぬ
祝祭日のみじかき昼を満たしくる酸(す)ゆきチエホフの断片たりし
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