三木佳子「風にあずけて」
「未来」所属の歌人・三木佳子(みき・よしこ)さんの第1歌集、「風にあずけて」を読みおえる。
2008年、短歌研究社・刊。米田律子・跋。
知覚過敏の痛みに耐えながら暮らして、妹の死去、同居する母の脳梗塞による不自由などに遭う。
歌集の「あとがき」ではその母も亡くなったと書き、すでに父はいない。
彼女は独身らしく、短歌を詠む・読む事が、そういう生活を越えてゆく、大きな力となるのだろう。
以下に6首を引く。
鳩の群れ秋陽の屋根にまどろむを見つつ電車は地下に入りゆく
熊蟬は朝を待たずに啼きはじめ知覚過敏の吾をいたぶる
かんな月神のいぬ間をもう少し寄り道したい川の向こうへ
車椅子に母のかかぐるVサインふぶく桜と共に撮らるる
十五夜の月はまどかに中庭を跳ぬる仔猫ら声立てぬなり
肌色のヒガンバナ咲きこの世から消えてしまった妹を呼ぶ
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