鈴木千登世「向きあふ椅子」
山口県にお住まいで、「コスモス」会員、「棧橋」同人の鈴木千登世さんが、第1歌集「向きあふ椅子」を送ってくださった。
僕が1時期、「棧橋」同人だったご縁で、贈ってくださったのだろう。
2014年5月、柊書房・刊。
小島ゆかり・選・帯文、394首。
家庭や仕事(教職)を、短歌と共に堅実に歩み続けて、その足跡が1冊の歌集となった。娘さんが生まれた事をきっかけに始めた短歌が、「コスモス」で20年となり、子供たちも社会人・学生となり、家を出て自立を始めた。
以下に6首を引く。
これら以外にも、反抗期の息子さん、震災・原発事故を詠んだ、気になる歌があるのだけれど、ここでは引かない。
メメント・モリ 生れ出でし子は終(つひ)の日の老いし顔もてわれに対へり
火遊びをして待ちをりし二人の子日暮れそんなにこはいかこはいか
歌を詠むわれのほとりにちんまりと正座して子が「ごんぎつね」読む
通夜といふ終(つひ)のだんらん父の辺に母とわたしと妹とをり
捨てられぬもろもろ抱へ老い母はほうと息吐きやはらかく笑む
胸びれをそよがすやうに手を振りて娘は雨の校舎に消えぬ
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