斎藤史「朱天」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、4番めの「朱天」を読みおえる。
8月16日の記事で紹介した、「「新風十人」より」に続く。
原著は、1943年、甲鳥書林・刊。364首(全歌集版では348首)。
多くの戦争詠を含むが、全歌集でも隠さなかった。ただし16首を削り、ある歌人は改作の疑いを示した。
以下に5首を引く。
思ひあまる事ひとたびは切りすてて身づくろひなし出てゆく我は
心飢ゑわが呼ぶ声のけものなし霞の奥におちてひびかず
われら行く道まさやかに示されぬ撃ちてやむべし勝ち終るべし
いのちありてシンガポールを踏みし兵を思ふに我も涙せきあへず
微小なる我らが生を思へらくいのちはいよよしろじろと燃ゆ
(1部、旧漢字を新漢字に替えた所がある)。
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