吉野徳恵「ひかる雲」
2004年、砂子屋書房・刊。
彼女は「未来」他で岡井隆に、「みぎわ」で上野久雄に学んでいる。
前の3分の2程を、「源氏物語」のうち、41帖に依って詠んでいる。後の3分の1程は、生活を詠み継いでいる。
僕は華やかな歌よりも、前部分にもある生活詠に惹かれた。
「悔ひつつも」「指適されたり」の表記があり、僕は誤りだと思う。編集・校正の途中で、著者も編集者も気付かなかったものか。
以下に6首を引く。
何色の花であるとも決めかねしあぢさゐの寄る雨の夕ぐれ
各々がその罪なじり合ふごとし書棚を崩れて散乱の本
傾きてならぬおもひを支へつつ地下の駅より登りてきたり
鍵盤に向かへばいつきに柔らかな翼をひらく童のをとめ
清やかなる香に立つ芹を食べをれば誰そに思はれゐる心地する
翅ひらく小鳥のやうに手をのべて抱かれにくる姉となりし児
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