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2014年8月29日 (金)

吉野徳恵「ひかる雲」

Cimg7898 吉野徳恵さんの第1歌集、「ひかる雲」を読みおえる。

 2004年、砂子屋書房・刊。

 彼女は「未来」他で岡井隆に、「みぎわ」で上野久雄に学んでいる。

 前の3分の2程を、「源氏物語」のうち、41帖に依って詠んでいる。後の3分の1程は、生活を詠み継いでいる。

 僕は華やかな歌よりも、前部分にもある生活詠に惹かれた。

 「悔ひつつも」「指適されたり」の表記があり、僕は誤りだと思う。編集・校正の途中で、著者も編集者も気付かなかったものか。

 以下に6首を引く。

何色の花であるとも決めかねしあぢさゐの寄る雨の夕ぐれ

各々がその罪なじり合ふごとし書棚を崩れて散乱の本

傾きてならぬおもひを支へつつ地下の駅より登りてきたり

鍵盤に向かへばいつきに柔らかな翼をひらく童のをとめ

清やかなる香に立つ芹を食べをれば誰そに思はれゐる心地する

翅ひらく小鳥のやうに手をのべて抱かれにくる姉となりし児

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