斎藤史「昭和51年作品」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、「昭和51年作品」を読み終える。
昭和42年から昭和50年の作品を収めた、昨年12月23日に紹介した歌集「ひたくれなゐ」(←リンクしてある)と、次の昭和52年から始まる歌集「渉りかゆかむ」の間にあって、単行歌集に収められなかった45首である。
短歌の数は少ないが、この中には夫の死と、老耄を深める母が詠まれている。
斎藤史はこれまで、全く夫を詠まなかったようだ。明治生まれの女として、軍人の娘として、婿取りの娘として、などがあったのかも知れない。しかし夫には、経済的にだけでなく、精神的に頼る部分もあっただろうと、僕は考える。
以下に4首を引く。
ひとついのちここに終りし空間の奇妙に明るき空(あき)ベッドあり
痩せ果てて冷えしなきがらさぐり泣く老母(はは)に来る死も遠くはあらず
今日や限りあすや終りと目守りつつ思ひ慣らし来ぬ死のときを 死を
老醜の母を視てゐるかなしみと嫌悪のはざま夜の雨ふる
(注:1部、旧漢字を新漢字に替えた所があります。)
コメント