加藤知世子「冬萌」
角川書店「増補 現代俳句大系」第9巻(1981年・刊)より、9番めの句集、加藤知世子「冬萌」を読みおえる。
1月9日の記事(←リンクしてある)、松本たかし「石魂」に継ぐ。
原著は、1953年、書肆ユリイカ・刊。1941年~1953年までの、466句を収める。
加藤知世子(1909年~1986年)が俳人・加藤楸邨(1905年~1993年)と結婚した頃、夫は家族・肉親10名を抱えた苦学生の家長で貧しく、戦争激化で食べるものに苦労し、戦後は夫が何度も病いに倒れて差押えの税吏も呆れる赤貧だった。(月報の加藤知世子「『冬萌』の頃」・他に拠る)。
彼女の句は激しく、鮮新であり、時に字余りともなる。
以下に5句を引く。
泣くまじく寒木の嵐暮れかかる
足袋に継あてて帰省も爆音下
振向きし蟷螂の目は燈の色に
虎落笛嫁が泣く場は詩の中
大年の悔にも似たる芥焚く
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