近藤芳美「歴史」
岩波書店「近藤芳美集」第1巻(2000年・刊)より、第4歌集「歴史」を読みおえる。
3月5日の記事(←リンクしてある)、「静かなる意志」に継ぐ。
原著は、1951年、白玉書房・刊。384首。
「後記」で彼は、「…私達にはもはや歴史から逃れて生き得る小さな片隅はあり得ないと云ふ事であり、…」と述べている。
それでも社会詠と相聞歌のギャップは、どこから来るのだろう。
自分の詩と短歌のスタンスも、定まって来るようだ。
以下に7首を引く。
みづからの行為はすでに逃(のが)る無し行きて名を記す平和宣言に
悲劇を好まぬさがは常にひとり稚き妻をまもり来りき
相へだつ憎悪と言へど知り過ぎて一つ時代を吾ら生き合ふ
アトリエの如き書斎を空想し冬待つさびしかつてなきまで
麦の野の傾くはての空暗く仔山羊は妻をひたすらに追ふ
貨物電車思はぬ夜半に過ぎて行く遠き河床の砂利を運びて
埃雲野にくらく立つ今日も又君の朝鮮に飛ぶ重爆ら
崩るるとき一瞬にして崩れ去る権威の空しさもすべて見て来ぬ
フリー素材サイト「Pixabay」より、椿の1枚を、トリミングして。
コメント