近藤芳美「静かなる意志」
岩波書店「近藤芳美集」第1巻(2000年・刊)より、第3歌集「静かなる意志」を読みおえる。
2月23日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「埃吹く街」に続く。
原著は、1949年、白玉書房・刊。約560首。
著者の思いは様々に揺れながら、政治行動にはみ出す事はなかった。従軍経験と、家族(父母、仕事のない弟と同居して)を守ろうとする意識が、そうさせなかったのだろう。
「あとがき」に拠れば、30代の歌人による「新歌人集団」の集まりがあり、「第二芸術論」等をも受け止める時代だった。
以下に7首を引く。
手術せしまなこけはしくなりながら弟は又仕事失ふ
縫物をとどけに出づる妻のため己れ健かなれと思ひぬ
常の如夜となり集ふ女らのぬれたる橋のてすりに並ぶ
戦争の時を何して生きて来しきたなき自我を互ひに曝す
するどき声みな若し会なかば卑屈に仕事に帰る幾たり
聡明に耐へて行けよと思ふのみ静かに泣けば傍らに寝て
技術への愛情が最後に残ること信じて生きぬ希望なき日も
フリー素材サイト「Pixabay」より、連翹の1枚。
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