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2015年2月23日 (月)

近藤芳美「埃吹く街」

 岩波書店「近藤芳美集」第1巻(2000年・刊)より、第2歌集「埃吹く街」を読みおえる。

 今月14日の記事(←リンクしてある)、「吾ら兵なりし日に」(後に刊行された中間の歌集)に継ぐ。

 原著は、1948年、草木社・刊。

 幾つか挙げたい事がある。

 彼は知識人として、懐疑を持ちながら従軍したのであって、ファナティックに突き進んだ農工民(大衆)とは違うという意識があり、大衆を戦後も信頼できなかったのだろう。

 戦後も手に職があり(建築設計家)、従順な妻があり、(短歌を創作していた事を含め)恵まれた立場にあった。

 また技術者(技術は、科学の現実への応用だろう)として、科学への(社会科学などではない)信頼があったのではないか。

 右へも左へも突っ走る事なく、なお誠実に生きようとした人だったという印象だ。

 以下に7首を引く。

墨入れて心落着く昼すぎは椅子も机も白く光りぬ

あたたかき霧立つ夕べ菜園の杭を打たむとたづさはり出づ

乗りこみし復員兵の一団はつつましくして上野に下りぬ

生き行くは楽しと歌ひ去りながら幕下りたれば湧く涙かも

日本にはすでに用無き戦闘機低くすわりて草に埋るる

狭き貧しき国にて共に苦しまむ沁む思ひあり朝鮮の記事

誠実に生きむとしたる狭き四囲技術家なれば生きる道ありき

Photo

フリー素材サイト「Pixabay」より、白梅の1枚。

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