服部真里子「行け広野へと」
購入を3月31日の記事(←リンクしてある)で報せた、服部真里子・第1歌集「行け広野へと」を読みおえる。
2014年9月、本阿弥書店・刊。
19歳~27歳の、青春真っ只中の289首である。
若い新人に多い(?)、「光」への固執は少ない。
句またがり、句割れ、1字空けは当然のように受け継いでいる。暗喩の歌も多い。
若さと才能の乱費であろう。
それも将来の何かを犠牲にして。例えばこの歌集に「子を産まぬ予感はときに幸福に似て」の下句の1首がある。
彼女の、このきらめきの未来を、見守って行きたいと思う。
以下に6首を引く。
春に眠れば春に別れてそれきりの友だちみんな手を振っている
人の手を払って降りる踊り場はこんなにも明るい展翅版
花曇り 両手に鈴を持たされてそのまま困っているような人
海を見よ その平らかさたよりなさ 僕はかたちを持ってしまった
遮断機は一度に上がり少年よこれがお前の新しい本
遠雷よ あなたが人を赦すときよく使う文体を覚える
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