近藤芳美「喚声」
岩波書店「近藤芳美集」(全10巻)の第2巻(2000年6月・刊)より、初めの第6歌集「喚声」を読みおえる。
先の3月21日の記事(←リンクしてある)、「冬の銀河」に継ぐ。
原著は、1960年10月、白玉書房・刊。669首。
歌集の時期に、政治的にはスターリン批判、ハンガリー事件があり、60年安保に関わる「夜と薄明」30首で締め括られる。
また1955年より、朝日新聞の「朝日歌壇」の選者となり、新かな遣いの規定であったため、自らも旧かなより新かなに替えた。
以下に7首を引く。
さまざまにかたち変え来る狂信の今も美しき名もて装う
十五年はやく過ぎにき今日のごと寂しき日々を吾ら夢見て
常に黙(もだ)す一つの世界吾ら知り見ており叛乱の制圧の日々
病い得て眼の澄む妻よ寂しさをやすらいとして二人知る日に
芸術は偶発の政治に関らずと呟けど強者の麵麭に生きしのみ
みな稚く腕くみ暴力に対う声その幾千を照らす雨の灯
犠牲死の一人の少女を伝え伝え腕くみ涙ぐみ夜半に湧く歌
フリー素材サイト「Pixabay」より、チューリップの1枚。
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