近藤芳美「冬の銀河」
岩波書店「近藤芳美集」第1巻(2000年・刊)より、第5歌集「冬の銀河」を読みおえる。
3月16日の記事(←リンクしてある)、第4歌集「歴史」に継ぐ。
原著は、1954年、白玉書房・刊。507首。この第1巻の、最後の歌集である。
この歌集の間に、対日講和条約が結ばれ、朝鮮戦争の停戦があった。
彼は社会詠、相聞歌が注目されるが、多くの叙景歌があり、生活と心情を暗示している。
以下に7首を引く。
力の下平和はありとためらはぬ其の声々も見まもりて居よ
新しく吾らが負はむ忍従も今はひとりさへ言ひ出づるなし
おのづから戦ひ絶ゆと前線のその日のことも早く伝はる
新しき日本を信じ会ひし日々過ぎし喜劇と今も思はず
午後に入り暴動化するメーデーをしだいに今夜のラヂオは伝ふ
母の写真小さく切りとり香をたく妻のしぐさもさびしめるのみ
さめて聞く激しき雨といかづちと遠く来りぬ雪ぐにのはて
フリー素材サイト「Pixabay」より、椿の1枚をトリミングして。
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