近藤芳美「異邦者」
岩波書店「近藤芳美集」第2巻(2000年・刊)より、第7歌集「異邦者」を読みおえる。
先の4月14日の記事(←リンクしてある)、第6歌集「喚声」より間が空いてしまった。
原著は、1969年、短歌研究社・刊。1960年~1964年の807首を収める。
1ヶ月間のソビエト旅行(268首)、翌年の欧米旅行(145首)での作品を主とする。
ソ連の希望的な言葉の影の不気味さ、アメリカの豊かさの中の貧窮も詠んでいる。
あちらにもこちらにも付くというのではなく、豊かな高福祉の社会を夢見ていたのではないか。
以下に6首を引く。
モンゴルのかたかと思う地の起伏夕月は顕つ藍暗きはて
吾らのため開く扉のなき事も常に「平和」のかげあらぬ声も
ついに来し思いにチェーホフの椅子に凭(よ)るを部屋昏るるまで吾を咎めず
国越ゆる無人地帯につづく柵はるか没り陽のひかり無き見て(オランダ国境)
オーバーのままの貧しき食卓にみな独りなり老いし白人
郷愁の感情不意に声震うひとりと歩む商社の青年
フリー素材サイト「Pixabay」より、アイリスの1枚。
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