近藤芳美「黒豹」
岩波書店「近藤芳美集」第2巻(2000年6月・刊)より、第8歌集「黒豹」を読みおえる。
先の5月22日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「異邦者」に継ぐ。
原著は、1968年、短歌研究社・刊。698首。
ベトナム戦争、中国の文革、全共闘運動なども詠まれている。
併読する「上村占魚全句集」の、時事・政治に背を向けて、ものの捉え方・修辞の向上に専心する方向と、矛盾するようであある。
しかし時事・政治も内部で活動するのでなく、「歴史」と客観視するのでは、相聞歌・自然詠と同じ面に留まるのではないか。
僕は、朝日歌壇、「未来」での近藤・選歌を知らないから、その面での関わり方は述べようがない。
僕としては、時事・政治に関心を持ちつつ、身辺詠を続けるしかない。
以下に6首を引く。
或る夜映るベトナム前線の韓国兵怯えて笑みて難民と共
妻の小箱に一夜羽化せる黄揚羽かすがるカーテンの暑き雷鳴
一国のかくたわやすき軍革命飢えたる町のつねの歓喜に
あかときを戦車の燃ゆるのみの街このひそかなる時の隔絶
石打たるるたれもかく老い革命の新たなる日か息呑めば今
語彙貧しくうちなるベトナムと繰り返す脆さも悲しみも聞き帰るべし
フリー素材サイト「Pixabay」より、バラの1枚。
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