村野四郎「故園の菫」
筑摩書房「村野四郎全詩集」(1968年・刊)より、第5詩集「故園の菫」を読みおえる。
先の8月21日の記事(←リンクしてある)、同「珊瑚の鞭」に継ぐ。
原著は、1945年(昭和20年)1月、梧桐書院・刊。
弟の戦死を悼んだ「海の声」では、「おまえの血が どんなに美しく/鉄の甲板を流れたであろう/おまえの血が どんなに輝きながら/海へ滴りおちたであろう」と戦闘死を美化している。
「春の尺牘(てがみ)」では、「ああ 大東亜の広袤を/僕たち 若い友情のリボンで結ぶ/そのよろこびで/僕はうっとりしている」と侵略の美化に酔っている。
また1944年3月の「珊瑚の鞭」に続く詩集発行で、敗戦近く続けて出版できたのは、理研コンツェルンの重役だった立場も役立っただろう。
原本にあたっていないのだが、これらの時期の詩が旧かなでなく、新かなになっているのも、不審である。
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