村野四郎「抽象の城」
筑摩書房「村野四郎全詩集」(1968年・刊)より、第8詩集「抽象の城」を読みおえる。
先の9月30日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「実在の岸辺」に継ぐ。
原著は、1954年、宝文館・刊。
4部87編より、この本では「実在の岸辺」以降の作品らしい16編のみを収める。
作品「無神論」では、「ぼくは寺院でもなく/ぼく自身がその神なのだから//リルケの神は存在であった/ぼくもまた燃えつきる存在/崩壊しつつある神なのだから」と書いている。資本の側に立つと、万能感があるのだろうか(老いゆく資本家だけれど)。詩人たる傲りからの言ではないだろう。
「さんたんたる鮟鱇」は有名な作品だが、「もう 鮟鱇はどこにもない/惨劇は終っている」と書いている。惨劇は次世代に引き継がれるのだ。
詩論を多く発行したり、現代詩人会(三省堂「現代詩大事典」にこの組織の名前、改称語の「日本現代詩人会」も載っていない)の幹事長になったり、「詩学」の投稿作品選者になったり、戦後の庶民をよく判っていない詩人が、影響力を振るおうとしたのは、戦後詩に良くない事だった。
コメント