近藤芳美「祈念に」
岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)に入り、初めの第14歌集「祈念に」を読みおえる。
先の10月7日の記事(←リンクしてある)、「聖夜の列」に継ぐ。
原著は、1985年、不識書院・刊。591首。
庭の四季と平安な夫婦、短歌の先輩・友人の死、母の死、スペイン旅行、残る政治的関心などが詠まれる。
解説の道浦母都子が指摘する通り、字余りが多く、助詞の省略もあり、読みにくい歌もある。
以下に7首を引く。
柿の葉の茂りは深き梅雨の冷えひとりの死ゆえ書きてこもる日を
君のための弔辞になおも告げむことば不意なる焦燥か怒りか知らず
ひかり放ちひらかむとする充実に月下美人の香は満ちわたる
なだれを呼ぶなだれのとよみなお遠く吾ら平安の夜を今とする
ブラックの一点を得しさきわいを知るやすらぎに日は過ぎめぐれ
若き日の母に返りし死顔のかく透きて人の苦しみは過ぐ
トレドより戻る野にして雨に遭うはるか地平を降りて移るまを
5首めの「ブラック」は、フランスの画家である。
コメント