近藤芳美「磔刑」
岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)より2番めの、第15歌集「磔刑」を読みおえる。
今月6日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「祈念に」に継ぐ。
原著は、1988年、短歌新聞社・刊。268首。
道浦母都子の解説に、「音楽性やリリシズムの喪失を越えて語らねばならぬ、ある切迫感と緊張感」とある。彼女が学んだとする「詩」と「詩人」の考えは、僕と異なるけれども。
以下に7首を引く。
書きつがねばならぬひとつをようやくに思わむ齢生きて友らなく
待つ父母ありにしこともまた遠く青松虫の月に鳴きしきる
天安門広場の霧にまぎれ帰る遥かあり大き国のさなかに
詩人ゆえに心許され語り合う一夜遠く来し西安といえ
またひとりと逢うこともなき通院の日は似つつ過ぎ凍る夕月
鬼剣舞のひとりは白き鬼の面怨嗟の舞のやむこともなく
病むひとりをめぐる会あり戻る夜をアルストロメリア妻は雨に抱く
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