近藤芳美「命運」
岩波書店「近藤芳美集」(全10巻)の第5巻より、第22歌集「命運」を読みおえる。
歌集編・全5巻の、最終巻の最終歌集である。
前回の「未明」は、今月12日の記事(←リンクしてある)にアップした。
原著は、2000年、砂子屋書房・刊。1998年、1999年の430首。
この2年の間にも、韓国、ニュージーランド、中国東北部の海外詠があり、社会詠、等がある。
第5巻にはこの後、佐伯裕子の解説、全歌の上3句に拠る「短歌索引」等を収める。
なお第6巻以降の、歌論、小説等は、のちに読む事にして、この集の僕の読書を一旦、中断したい。
以下に7首を引く。
召さるるとことばはありき宇品なる冬日の埠頭在りしままながら
武寧王陵重なる古墳のまに紛れひかり夏なすつつじの盛り
市場への投機が生みやまぬ危機となし資本主義制覇の十年の後
九八年終うとしバグダード攻略を遥かに伝えいまだ地の眠り
花を飾る庭を競いて町ありきクライストチャーチユーカリ高く
知るものを老いの孤立の位置といえ稀に人と会うことばへの飢え
ためらいの長き後なる旅ながら瀋陽の大き曠野の朝焼け
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