近藤芳美「岐路以後」
今月16日の記事「届いた2冊」で紹介した2冊より、近藤芳美・遺歌集「岐路以後」を読みおえる。
3月19日の記事(←リンクしてある)で紹介した、生前版「近藤芳美集」最終歌集「命運」のあと、単行本・歌集「岐路」を読みたかったが、Amazonではプレミアムが付いて買えず、次の遺歌集「岐路以後」を読んだ訳である。
2007年、砂子屋書房・刊。
函、帯(岡井隆・帯文)。
2004年~2006年の歌に、夫人の「あとがき」を付す。
近藤芳美は晩年、夫婦でケア付き高齢者マンションに住み、落ち着いた生活だったようだ。
以下に7首を引く。
今日のため綻ぶ桃の花の届くいずくか早き春を育てて
時定め厨房の下に甘え啼く軽鴨のつがいの餌に足れば去る
眼を病みてひかりと影と見失う吾がための視野冬に向かいて
一兵の妻なりにしを待ちて病む一生の後の後遺症とも
人間の生死の無明ようやくに避け得ざる宿命に相向かうため
妻の鬱なおいつまでか黙し合うのみの一と日の昏れなずむころ
マタイ受難曲そのゆたけさに豊饒に深夜はありぬ純粋のとき
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