竹山広「とこしへの川」
2014年12月30日付けの記事(←リンクしてある)で、届いた事を報せた「定本 竹山広全歌集」(写真は函の表)より、第1歌集「とこしへの川」を読みおえる。
「とこしへの川」は、1981年、雁書館・刊。495首。
竹山広(1920年~2010年)は、1941年「心の花」入会、他の歌誌を巡って1959年「心の花」に戻った。
「あとがき」に1955年から1980年の作品を収めたとあるから、彼は少なくとも被爆10年を経てから長崎・被爆体験を詠い出し、36年を経てからその被爆詠を含む歌集を出版した。
体験を作品化し、本にするまで、そのような年数が要ったのだ。
以下に7首を引く。
血だるまとなりて縋りつく看護婦を曳きずり走る暗き廊下を
訪ねきてしきりにねむたがる妻よひとときの幸はや終るべし
み車に小旗ささげ振る学童らつひに頭(かうべ)を垂るることなし
死にそびれたるゆゑ長く生くべしと言はれつつ病み耐へし十八年
焼けのこりたる肉塊にガソリンをかけをりしかの校庭ここは
落葉摑みゐし幼な手もひらきやりぬ裸の胸に組ましめむとて
急須の茶濃くなるを待つしばしだに心遊べと照る木瓜の紅
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