村山美惠子「有涯」
平成17年、短歌研究社・刊。
著者は、昭和11年生、大阪府・在住、結社誌「水甕」選者。
この本は、彼女の「溯洄」「漂寓」「惜秋」に続く、第4歌集である。
彼女の歌の特色は、良家の婦人らしい、おっとりしたところにあるのだろう。
僕の立場(百姓の次男、現場労働者)からすると、反発する面もあるのだけれど。
以下に、付箋を貼った6首を引く。
東京のほこりの匂ひ頭に満てり髪洗はむと湯に浸すとき
大丈夫走らないでと言はれつつ車の間を縫ひ渡りゆく(中国旅行詠より)
屋根を打ち樹を打ちわれの心打つ落ちつつ雨は弱音を吐かず
檸檬握り載せ場を捜すどの部屋も崩れむばかり山をなす本
無事帰国せりてふメール散歩より戻り来れるごとくに穏し
置き捨ての椅子の人形に亡き夫の嵌めてやりにしままの腕時計
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