柴田翔の小説、「燕のいる風景」を読みおえる。
新潮文庫、昭和57年・刊。
柴田翔は、60年安保の挫折を描いた「されどわれらが日々」で売り出した作家である。昔にそれを読んだが、とくに感慨はなかった。
この本は、「連作短編 あるいは ごくゆるやかな長編」と副題されている。
それぞれの短編の時代設定が、第二次大戦中から戦後の経済成長期に、移ってゆく。
その時期に僕はあまり関わっていないが、庶民の姿を、男女関係を含めて、うまく描写していると思う。
幻想性を含む美しい描写、構成もうまい。
ただし物語の結着を自分で付けられないなど、作家としての誠実さに欠けるところがあると思う。
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